大型連敗が多発した異常なシーズン、2017年のプロ野球を振り返る
はじめに
ヤクルトファンからしたら、こんな記事を今頃投稿して何様のつもりだ、炎上覚悟なのかと思われるかもしれないが、筆者がこの記事の執筆を開始した日はGW中であることをまずは断っておきたい。ちなみにその日に書いた記事の出だしは以下のとおりである。
「6/11(火)からは、巨人の交流戦3節目、西武とのメットライフドームでの3連戦が始まる。特に何でもない交流戦の一幕じゃないかと思われるかもしれないが、我々巨人ファンにとってはそうもいかない。なんせこの交流戦メラド3連戦は、2年前3タテを食らい、あの伝説の13連敗を記録した忌々しきシリーズなのだ。
今回は、そんな2桁連敗が多発した2年前、2017年のNPB公式戦を今一度振り返ってみよう。」
まさかヤクルトがあのような状況に陥るとは思ってもみなかったが、俺を含めた巨人ファンにとってはこれから因縁の3連戦が控えているということで、今回は忖度をせずこの記事を投稿する。
NPBにおける連敗の目安
5連敗…およそ1週間勝ち無し。どこかのチームに3タテ*1を食らい相手がウキウキになる。2度経験するとそのシーズンでの優勝が厳しくなりがち。
6連敗…先発ローテーション6人全員白星無し。監督がベンチやオーダーのテコ入れをしだす。
9連敗…リーグ優勝チームの公式戦最多連敗記録。*2表ローテの投手の誰かが先発した試合で確実に2連敗していることになり、この辺からファンが荒れだす。
10連敗…2桁の大台。クライマックスシリーズ出場チームの公式戦最多連敗記録。*3人気球団の場合はスポーツコーナーの枠が短い一般ニュースにも映像付きで取り上げられるようになる。
11連敗…およそ2週間勝ち無し。通常のリーグ戦なら連敗中に対戦したチームとまた対戦というケースが発生する場合が多い。楽天の公式戦最多連敗記録*4であり、この辺から各球団の連敗記録更新がチラつく。
その後、各球団の連敗記録が立ち並び……、
16連敗…セ・リーグの最多連敗記録。1970年*5と2019年に2度ヤクルトが記録している。2019シーズンの暫定最多連敗記録。*6
18連敗…ロッテが1998年に記録した、NPBの公式戦最多連敗記録。
ってな感じ。
んでもってこちらが2017年の大型連敗集。
1位:14連敗/ヤクルト(7/1~7/21)
2位:13連敗/巨人(5/25~6/8)
3位:10連敗/ヤクルト(5/30~6/10)
3位:10連敗/日本ハム(4/14~4/27)
3位:10連敗/楽天(8/23~9/3)
この大型連敗の多発が近年でどれだけ異常だったかは、こちらのフルカウント社の記事を参考にしていただければ良いと思う。
列伝
13連敗/巨人(5/25~6/8)
大型連敗して成績が落ち込み話題になるチームの特徴は「強いところから徹底的に捲られる」ところだったのだが、今回の巨人の場合は「パ・リーグから総じてカモにされる」というニュータイプの大型連敗だった。*7
珍事はこの球団の連敗記録自体だけでなく
・交流戦抜きの同リーグレギュラーシーズン125試合では2位なのにBクラス(交流戦開始後史上初)
・連敗開始の前日から数えて14試合連続被本塁打(NPB記録)
・菅野智之が2試合連続で5失点以上を喫する大炎上(菅野のキャリア史上初)*8
といった具合。冒頭のスコアも見てもらえるとわかるが、しっかりと打たれ、しっかりと抑えられ、結果交流戦前半戦全て負けるとはさすがに誰も思いもしなかっただろう。また、外国人運用にもこの時期はてこずり、マギー・カミネロ・マイコラス・マシソンの4人体制にオールスター前までは固まらず、外国人野手に見切りをつけられぬままチーム状態がずっと不安定だったのもBクラスの要因としては大きい。
10連敗・14連敗/ヤクルト(5/30~6/10・7/1~7/21)
21世紀に入ってからのヤクルトは、初年度の2001年に優勝して以来浮き沈みが激しかった。とにかく主力級の投手野手とベンチの差が激しく、ひとたび誰かが離脱したり不振に陥ったりすると一気に転がり落ちるが、いざハマると急上昇という、非常に斑のある球団で、それを一番理解してるのはほかでもないファン自身であろう。
2017年は防御率、打率、得点、本塁打、失策数全てがリーグワーストに終わり、その極致が現れた形となった。特に投手陣のなかでも石川・秋吉・ルーキのスランプは連敗を加速させる要因となり、小川・星の疲労骨折という形で重い代償を払わされるという結末に。この年のドラフトで社会人投手に凸りまくったことは言うまでもない。
打撃陣は坂口とバレンティン以外見どころ無し。川端のヘルニアの影響でサードが空いたが、最後までこれといった代役が出ることなく、上位打線からカード不足に陥った。
10連敗/楽天(8/23~9/3)
10連敗してクライマックスシリーズに出場したチームは、これまでの延べ72チーム中2チームだけ。そのうち1チームがこの楽天だ。
楽天の2017シーズンはお盆までソフトバンクと熾烈なデッドヒートを繰り広げていたが、6連敗、1勝を挟んだ後引き分け込みの10連敗で一気に転げ落ち、炎獅子ユニフォームで連勝を重ねた西武にも順位を抜かれて3位に終わった。
前半戦は2~4番に強打の外国人打者をそろえ、小技に頼らずボコスカ打ち勝ってきたが、後半戦になるにつれ打線が低調になり、緻密な野球をしてこなかった反動が一気に来てしまうという惨状に。
しかも8月はAクラスのソフトバンクと西武に0勝11敗1分。*99月の頭のソフトバンク戦でも3タテを食らって10連敗。さらにこの3連戦中では36イニング連続タイムリー無し、10連敗中の平均得点は2.27点と本当に貧打にあえいだことが分かる。エースの則本昂大が必死に投げながら崩れ落ちた、9月3日のあのシーンを鮮烈に覚えている人も多いだろう。*10
ちなみに8月中に楽天から8勝1分とまくりにまくった西武はこの期間の平均得点4.55点と、楽天の倍の得点を稼いでいた。
なお、この連敗はそれまでの大躍進と8月の大ブレーキの原因になったペゲーロの2軍落ちという形でけりがつけられることになる。
10連敗/日本ハム(4/14~4/27)
日本ハムはシーズンを通して毎月調子がぐずつく週があり、連敗が始まればストップ、また始まってストップを繰り返していた。*11
それもそのはず、大谷翔平の離脱で投手陣が格落ちしたこと以上に、西川遥輝しか頼れるレギュラーがいない打線が慢性的な得点力不足を引き起こした。特に中田翔の不調、近藤健介の離脱をはじめとしたクリーンナップの弱体化の影響は大きく、打率・本塁打・得点のすべてでリーグ5位。確かにこれでは勝てるゲームも勝てん。
まあそれのさらに下を行っていたのがロッテだったんですけれども。
最後に
筆者はあの13連敗が起こった後、ベローチェの店内で友人に悲痛な声で電話をすると同時にある決心をしていた。「この連敗さえなければ」と嘆くのはやめよう、と。
頼みの主力が同時に不調に陥ればダメ、誰かが大いに崩れてもダメ、テコ入れしても裏目に出ればダメ。
1つの勝ち星を得ることが難しいと実感する瞬間は、野球ファンであれば幾度となく訪れるが、そこに競争原理がある限り、お互いに容赦は無いからこそ難しいのだと、同時に気づかされるのである。
*1:同一対戦カード3連戦3連勝
*2:1992年ヤクルト、2015年ヤクルト。8連敗しての優勝は1971年阪急、1990年西武、1994年巨人の3例。
*3:2012年ヤクルト(3位)、2017年楽天(3位)。9連敗しての出場は2009年ヤクルト(3位)、2011年日本ハム(2位)・西武(3位)、2014年広島(3位)、2015年ヤクルト(1位)の5例。
*4:2005年に2度記録
*5:8/4~8/25
*6:6/7現在。
*7:ただし交流戦最多連敗記録は11連敗で日本ハム(2005)が記録。
*8:2018年と2019年に2度目、3度目の2試合連続5失点以上を記録
*9:全体では7勝18敗1分。
*10:則本は8/19 9回自責2、8/26 8回自責1、9/03 9回自責1という3戦のピッチングでいずれも負け投手になっている