執事喫茶に行ったら心ここにあらずになった話【執事喫茶スワロウテイル】
※注意
店内は撮影禁止です。今回はほぼ文章のみでお楽しみ下さい。
執筆は10年以上前ですがマイナビニュースの取材記事があるので、店内の様子が見たい方はそちらも参照するといいかもしれません。
執事喫茶スワロウテイル。池袋駅の東にあるビルの地下1階にひっそりと構える、何やら不思議な見た目をしたところ。友人に誘われついていった俺は、とてつもなく張り詰めた、そして満足した80分間を過ごすことになる。
2019年3月5日。同行者とJR池袋駅の東口で落ち合い向かうは、執事喫茶スワロウテイル。(公式サイト)まずはそこに誘い、予約を取ったその友人の有能っぷりに最大限の感謝を述べておこう。
執事喫茶ってどんな感じなんだろうか。同行者の提案が無ければ行かないまま人生を終えていただろうし、人生経験として非常に面白そうである。
えーとGoogle Mapだと、この辺だけど、
ん?このビルの地下1階?黒の壁面に店のロゴらしきものが書かれている。ここっぽいな、予約時間が近いし、早く降りようか。
あっ、
この店、
ちゃちな気持ちで来るもんじゃなかった……。
まずエントランスらしきところに通されたのだが、ヤバい、いかにもすげーバリバリ店員キメてきますよ感がする。なんかメイド喫茶みたいにゆるりとしてる感じじゃなくて、高級料理店みたいな感じのやつだ、どうしよう、ボトムスがジーンズじゃないからまだいいけどいかにも自分「典型的男子大学生ですよーーーーーーー」みたいな服装してきちゃったの全力で後悔し始めてきた。あと今日雨上がりだから花粉症の症状酷いしこれまずいって目も鼻もやばい誰かティッシュ配ってねえかなマジで不動産屋とかこの辺いねぇのかよ来てほしいんd
「お待たせいたしました」うおドア開いた!!
その瞬間、俺ははっきりと全てが呑み込まれていくのを感じた。
「おかえりなさいませ、殿下様」*1
扉を開けて出てきたのは、それっぽい雰囲気にマッチした執事のおじさんと、フットマンのめちゃめちゃ上品な男性。(仮名:Sさん)衣服をきっちり着こなしているのも相まってかスタイルがよろしい。そして何よりも顔がいい。重要なのでもう一度言う。とても顔がいい。
ああ……、俺はこれから、この異空間に飛び込んでいくんだ……。
俺みたいな人間がそんな目の前にいる素晴らしい方々に丁重にお出迎えされるなど本来はあってはならない事象のはずなのだが、彼らは手慣れた手つきで外套やら荷物やらを(我々に自助努力を一切させずに)脱がせて預かってしまった。*2
すみません、なんか、案内されます、80分間よろしくお願いします……。
って、
んひーーーーーーー
店内広っ!!!!!!!!!!!!!!!!!
スワロウテイルは株式会社ケイ・ブックス傘下の飲食店であり、同じビルの違うフロアには本業であるサブカル系の小売店が入っているのだが、その売り場を目にした身からするとあまり考えられない結構な広さの、とても格式高い空間が広がっている。
その中にいるのは、絶対に何回、いや何十回かか来たことがあるであろう、優雅にベルを鳴らしながら思い思いに屋敷のひと時を過ごす他のお客さんたち*3と、そのお客さんたちに目を配らせテキパキと仕事をこなしたり、会話をしたりするフットマン達。
徹底した世界観の保持を図り、あらゆる点で店の雰囲気づくりに抜かりが無いことをすぐに察した俺は、この雰囲気への「共同参画」とやらを全力で自発的に求めていた。
もう緊張MAX。ひろみちお兄さんに言われなくとも背筋がピンと張る。「絶対屋敷の党主のふりした方が楽しいって!!」って俺にアドバイスくれたサークルの同期へ。*4はっきり言います。このお店だと初見じゃ無理です。
フットマンの呼び出し方法などの店の仕組み*5や、メニューの説明をSさんから受ける。流暢かつ丁寧。俺たち2人に対する慣れた視線の配り方。教育が行き届いているなと思わせる喋りだ。書かれているメニューはどれも値段の張るものばかりだが、それはそうだと納得させる「それ」をここまで体験した俺たちは
「ハイ……アリガトウゴザイマス……」*6
と返す他ない。Sさんごめんなさい。
いやーヤバいねこりゃ。個室案内されたんだけど、オーダーしてからそれが来るまでの記憶が無いです。冷や汗かきまくってましたわ。もう少し座席の様子とか伝えられれば良かったんですけどね、*7お話ちょっと先進めますね。
料理が来た。3段構成になっている。俺はアフタヌーンティーの「ヴィクトリア」を頼んだので、最後のデザートは大きな皿になるため上段が空いている。
料理の器に見とれながらまず目の前に置かれた*8のはキッシュ。料理の説明を丁重に受け、いざナイフを入れると、なるほど確かにSさんに言われた通りやわらかさの具合がたまらなく伝わってきた。勇気を出してフォークを刺し口の中に入れてみる。
———なんだこのキッシュめっちゃうまい。サイズが普通のみかんぐらいなのに、出汁がその中にこれでもかと詰まっていて、噛むとそれが一気に口の中に解き放たれていくようである。一体その小さなフォルムのどこにそんなポテンシャルを隠し持っていたというのか。シエナ風とのことで、ナイフを入れると味のついた玉葱が卵の下から出てきた。焼いた卵とこの玉葱の噛み応えや風味の差がまたたまらない。
食べ終えるとSさんは皿を片付け、次にスコーンを出してきてくれた。食用桜が上にのった、甘じょっぱいスコーン。プリザーブ*9の苺ジャムと生クリームとのマッチングも良い。
しかしそれ以上に特筆すべき点はSさんの教えてくれたスコーンの成り立ちである。あの説明は必聴だ。東大生各位はこの説明に至るまでの自然な流れの作り方と、喋り方を盗んだ方がいい。
どんな内容だったかって?
現地へ行って、
聞こうね!!!!!!!!!!!!
飲み物は辛目の白ワインをオーダーした。周りの友人たちは白ワインというとスパークリングワインをよく飲んでいる姿を見るので、あまり辛目のワインって人気ないのかなーでもちょっと飲んでみたいなーと思っていたのだが、オーダーにきっちり応えて用意して頂いた。このワインめっちゃうまいな。アメリカ産だって言ってたわ確か。料理よりも先に来たので少し飲んでみたが、かなり喉にガツンと来る。だがキッシュはもちろんのこと、意外とこのスコーンの生クリームにも合うので驚きだった。スコーンを食べてると喉が渇くのも相俟って進む進む。へーパイナップルがこんな味になるんですねぇ。
そして最後はデザートの「アフロディーテ」。こちらはスワロウテイルの公式サイトに画像があるのでご覧いただきたい。
芸術性の高さからまず突っ込まないとねこれはね。君たち考えたことある?このデザートプレートが俺の目の前に運ばれた時の気持ち。もう俺頭を横にして様々なアングルから見て網膜に焼き付けてやったわ。「月曜から夜更かし」で、富士山の景色は静岡側と山梨側どっちがキレイか東京都民100人にアンケートしたら50対50の五分五分になった話があったけど、このプレートもどこから見ても素晴らしいんだよね。食欲をそそるだとかそういう次元はとっくに超えてた。俺はね、震えたよ。
まあいつまでやってても仕方ないんで、まずはアイスがある「ちいさないちごのパフェ」から頂くことにしようか。
んーおいしい!いちごのアイスの甘味、ソースのほどよい酸味、そしてちりばめられたラズベリーが発する刺激をチーズクリームと生クリームが取りまとめている。このパフェはアイスがまず目につくが、実際はこの5つが互いの良いところを補填し、高め合うのである。総合力の勝利。ケン・グリフィーJr.みが深い。最高の5ツールプレーヤーだ。
味蕾が喜びを覚えたのか、パフェを掬ったスプーンと接した舌が唾液を分泌し、少しのクリームでも摂取してやろうという意気込みを感じる。その意気込みに呼応したのか、容器の中身はすぐに消え去ってしまった。*10
続いて目線を下に移し、「いちごのムース」と「ガレットラム」にいってみよう。
何この100点満点軍団は???????
とてもじゃないが、この美味しさを享受できる立場に俺がいるとは思えない。ムースを食べた瞬間の蕩け具合。なんたる幸福であろうか。見た目もいいし味もいい。このような代物を世に放ったパティシエは天才。
ガレットは歯で噛んだときの擬音語で「サクッ」が似合う選手権でトップクラスに食い込む。周りのチーズにつけることでさらに強力なものとなるということを知り、今度はそうやって食べてみるとこれがまた優しい味なんだねほんとに。こりゃすげぇや。
はーーーーーーー泣ける……
幸せ………………………………………………………
………………
…………
……
最初は緊張しまくって何をしたらいいのか分からなかったが、なんだかんだであっという間の80分だった。いや、すいません、嘘です。今「最初は」って言いましたけど、Sさんが「そちら(ナプキン)お預かりいたします」って言って俺らソファのクッション渡したわ。終始緊張しっぱなしでした。
テーブル上で会計を済ませ、*11出る前にもう一度周りに目をやっているとSさんがこんなものを渡してくれた。
はーーーーーーいはいはい俺また行きます!!!!
書きます!!!!!!!!!!!!!!!!
書かない理由がない!!!!!!!!!
今度は絶対ビジネスアタイアで行きます!!!!いやそうさせてください!!!!!あとバイトすんぞ!!!!!!!!!
え、ってかさ誰かさ行こうよマジで。俺予約すっからさ。男1人だと行きづらいんだよ。な?な?春期休暇中。いこーよーホントに行ってよかったからさー。Sさんとかに「できるだけ早いお帰りをお待ちしております」なんて言われたもんだから俺もう戻りてえんだよあそこーーーーーーーー頼むよーーーーーーー。
ということで、TwitterのDMでのお誘い、お待ちしております。
おわり
*1:ひなまつりキャンペーンの一環として、普段は「お坊ちゃま」と呼ぶところを「殿下様」と変えているとのこと
*2:ちなみに俺はがちがちになってお二方とうまく呼吸が合わず、上着を脱ぐのに苦労した。
*3:言うまでもないが俺が見えた範囲では全員女性だった。
*4:今回の同行者とは別の人。
*5:予約フォームの注意書きには「席をお立ちになる場合は,お席のベルで執事・フットマンをお呼び頂いております。意図的にお席をお立ちになるなど,他のご来館者様のご迷惑となる行為をされた場合には,ご退館頂くこととなりますので,予めご了承下さいませ。」と書かれている。身の回りのことはすべて使用人たちがやってくれるのだ。
*6:俺たちのこの発言に対してSさんは「使用人にありがとうございますだなんて」とおっしゃるときたもんだ。もう色々満たされるばかりでこっちは泣きそうである。
*7:ただ背後に洋書があったのは覚えている。あとテーブル結構広い。
*8:無論皿を持ってきたり、下げたりする作業も使用人の役目となっている。うそでしょ。
*9:5種類のうち2つ選べる。
*10:体感のスピードは一瞬だったが、実際は逐一食べるたびに感動の言葉を口にしていたので食べるペースがめちゃくちゃ遅かった。キッシュとスコーンも同様。これガチですよ。
*11:同行者がおつりを紙幣のみに調整してお金を出したことを褒めてくれた。なんか嬉しい。